加古川市内で保育園を経営されている増田百代理事長から投稿がありました。
社会福祉法人夢工房 第三者委員会 調査報告書を読んで
兵庫県保育所運動連絡会
会長 増田百代
(社会福祉法人 はとのさと福祉会理事長)
平成28年10月17日に公表された夢工房第三者委員会の報告を読ませて頂きました。
社会福祉法人とは、社会福祉法に基づいて創設される法人です。その法律の第1条「この法律は、社会福祉を目的とする事業の全分野における共通的基本事項を定め、社会福祉を目的とする他の法律と相まって、福祉サービスの利用者の利益の保護及び地域における社会福祉の推進を図るとともに、社会福祉事業の公明かつ適正な実施の確保及び社会福祉を目的とする事業の健全な発達を図り、もって社会福祉の増進に資することを目的とする」となっています。このことの実現が社会福祉法人に求められています。私も法人の理事長として心してこの法律に立ち返るようにしています。
報告書を読んで、一番気になったことは、簿外債務についてです。報告書にも書かれているように、法人が新たに事業展開をするときに自己資金が求められます。しかし、公費を頂いての経営ですので、基本はその時、その時の子どもたちの処遇に充てる事が求められます。そのために自己資金を作ることはとても大変です。そして、最終の経営責任は理事長に求められます。「はとのさと福祉会」は、創設に当たって、「保育園をつくり育てる会」を団体・個人で組織を立ち上げました。会員が約400人近く組織されています。この会が、寄付や貸付を募ったり、地域祭りをしたり、バザーをしたりして資金を募り法人に寄付をしてもらっています。任意団体ですが、会則を持ち役員体制も作り定期総会を開きます。その総会でこの会の収支報告がされ、承認します。理事長も一人の会員として会費を払っています。よって理事長が法外な借り入れをすることもなく、家族に類が及ぶこともありません。夢工房は報告書が指摘するように「見せ金」のために個人的に借用した金銭を設置認可後の法人から給与で実質的返済したのでしょう。その方法が当たり前になり全国に次々と事業拡大していったと思います。このようにして、個人のお金と、法人のお金の区別がつかなくなり、全てが個人のお金であるかのように錯覚していった結果だと思われます。さらにお金に物を言わせて、権力を握り組織まで牛耳ることになっていったと思われます。そのために常識では考えられないありとあらゆる方法で経営してきた経緯がみられます。
ただ、報告書でも「いったい世の中に何の見返りもなく多額の寄付をする人がどれだけいるのか?」という発想に欠ける制度問題の内在も垣間見えるところであると書かれています。私も理事長をしていて、子どもたちと保護者、そして職員たちを守る重責を勤務もせず、報酬もなくやりに抜くということは、本当に苦しいことでした。私は理事会にお願いして、理事長の職務報酬として、毎月5万円いただいています。そして人手不足のため、毎日事務を中心に、勤務しています。就業規則の適応は職員と全く同じです。
「社会福祉法人はとのさと福祉会」としては、児童福祉法24条1項の保育所として事業運営をしていくことを方針としています。児童福祉施設として位置づけをしているために、3歳児以上児の主食費、月額700円以外は一切保護者の負担はいりません。個人口座に教材費など入りようがありません。このような考えで運営しているために、理事長として規約上の権限は有しますが、理事会に対しても、職員に対しても、法外な権力者として君臨する事はありません。ですから、決して家族まで巻き込むことはありません。しかし、一人の人間の心は大変弱いものです。そのために、「はとのさと福祉会」の事業所には、作り育てる会以外に、職員会・保育所保護者会が存在して自主的な会活動をおこなっています。職員労働組合もあり、要求書に基づいて団体交渉もします。それぞれ立場を踏まえて、自立した民主的組織運営をしてお互いが信頼し合える法人にしたいと心がけてします。
「夢工房」のことが新聞報道されて「社会福祉法人の理事長は儲かるのですか?」と質問を受けました。「公費を頂いて運営しております。理事長個人が儲かるなどは一切ありません」と答えました。
今、社会福祉事業法が改正され社会福祉法人の在り方が大きく変わろうとしています。
本来の目的を果たす法人になるための改革であるよう願っています。さらに今回社会福祉法人「夢工房」が犯した過ちは、福祉とはなじまない資本の論理が社会福祉法人に持ち込まれたことで、不正が発生しました。もともと、多くの保育所は一法人一施設で存在していました。そして、地域に密着して運営してきました。規制緩和で夢工房のように、全国各地に事業所を拡大した法人に対して、公的機関の監査が地方分権の名のもとで委任事務化された現状で、社会福祉法人の指導監査責任が不明確になっています。国の責任が大きく問われると思っています。
子どもと保護者・職員を犠牲にし、私腹を肥やすような社会福祉法人を二度とださないように、心から願っています。
以上
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